これまで2記事にわたって、歯茎に異常が起こった場合の対処法を紹介しました。
今回も引き続き、同じテーマでお話しします。腫れの原因や治療法について、詳しく解説します。

 

歯茎が全体的に痛む場合の腫れ方と原因

歯茎が腫れる主な原因や症状を、治療法とともに紹介します。口腔内に現在進行形でトラブルが起こっている方は、読み進めながらご自身の症状と照らし合わせてみてください。
現在は特に異常がない方も、今後のために知っておくとよいでしょう。

 

原因1.歯周病

歯茎の一部だけが腫れてぶよぶよとしている場合は、歯周病が疑われます。
次のような症状に、心当たりはありませんか?

・腫れぼったく、違和感のある歯茎をしている
・ブラッシングの際に痛みや出血がある
・歯が浮く感じがある
・平常時もズキズキとした痛みがある

該当する項目が多ければ多いほど、歯周病の可能性が高いです。症状が進行している場合、口臭や膿が発生することもあります。
「一部のみが腫れて痛む」という方も、気付いていないだけで日頃から口腔内に異常が生じている場合が多いです。意識的に鏡で確認し、自分自身の口腔状態を把握しておきましょう。

 

【対処法】
例えばケガをしたときに、傷口から細菌が入ると膿んで腫れますよね。これは人体にとって有害な細菌が侵入すると、身体が反応して退治しようとするためです。もちろん、口腔内も例外ではありません。治療としては、原因菌の細菌数を減少させるようなアプローチを行なうことになります。

具体的な治療内容は次の通りです。

・機器を使用して洗浄する
歯科医院の専門的な器具を使用し、歯の周囲の細菌を取り除きます。歯茎と歯の間の細かい隙間まで洗浄できるので、早めの治癒が期待できるでしょう。

・高濃度の抗菌薬を歯茎に塗る
抗生物質を服用するのではなく、高濃度の抗生物質を患部へ塗布して直接アプローチするという手段です。
患部へ直接塗り込むことで、抗生物質の効果を最大限発揮できます。急な腫れやひどい炎症がある場合に、応急処置として用いられる方法です。

ただし直接塗布する方法は、飲み薬ほど長時間の効果が期待できません。また塗布した直後に過剰なうがいをすると、せっかくの薬が流れ落ちてしまうので注意してください。

 

原因2.親知らず

痛みや腫れがある日突然起こった場合は、親知らずが原因かもしれません。一番の特徴は、奥歯付近に症状が出るという点です。
生えている角度によりますが、奥の方は特に磨き残しが生じがちです。食べカスを取り切れず、歯垢が蓄積しやすくなるでしょう。

 

【対処法】
原因が親知らずにある場合、まずは「原因1」と同様の処置をします。炎症が引いたことを確認したのち、抜歯をする運びとなるでしょう。
というのも、抗生物質の力で腫れを抑えることは「根本的な治療」とはいえません。原因に直接アプローチし、歯茎がずっと健康でいられる環境を整えることが大切です。
ただし、次のいずれかに該当する場合は、すぐに抜かない方がよいかもしれません。

・抜歯後に痛みが続いた経験がある
・出血が多い
・麻酔が効きにくい体質である
・もともと傷の治りが悪い

中には「早く抜いてよくなりたい」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、親知らずの抜歯は乳歯を抜くような簡単なものではありません。
処置を簡潔に行ない、術後の治癒を早くするためには、事前に細菌数を減らして体調を整えることが重要なのです。
最終的には歯科医師の判断になりますが、やむを得ない場合を除いて、歯茎に異常がある場合に「すぐに抜歯をする」という判断には至らないでしょう。

 

歯茎にできものができたときの腫れ方と原因

続いては、全体ではなく一部にのみ「ぽっこりとしたできもの」が生じた場合です。歯の根っこ付近が腫れるパターンが多いでしょう。
このような症状の主な原因と、治療法は次の通りです。

 

歯の神経が壊死して膿んでいる

一部にのみできものが発生した場合、むし歯が進行して神経が壊死し、内部が生んでいる可能性が疑われます。もしくは過去に、根管治療をした歯が再感染を起こしている可能性があるでしょう。
歯の根に感染が起こると、細菌から逃げるように骨が退縮します。そして細胞の死骸などが、その部分に膿となって蓄積されるのです。

 

【治療法】
歯茎にできものが生じている場合、その原因となる歯に適切な治療を施さなければなりません。壊死している神経を除去し、歯根を消毒して細菌がない状態にします。もちろんこの処置は、患者さまご自身ではできません。歯科医師による治療が必要となり、歯科医院へしばらく通うことになるでしょう。
ちなみに根管治療は、むし歯のときのように「削って詰め物を入れれば、すぐに痛みが消失する」というわけではありません。
身体が治そうとする力を、細菌数を減らすことによって助けるといったイメージです。そのため腫れが消失するまで、1週間~10日程度は必要になるでしょう。

 

 

まとめ

これまで「歯茎の炎症」をテーマに、腫れ方の特徴や原因、治療法などを説明してきました。
少しわかりにくい部分もあったかもしれませんが、いかがでしたか?
最後におさらいとして、大切なポイントをかいつまんでお話しします。

 

まず歯茎が腫れたときに、重要なのは「痛みを抑える」ということです。適切な応急処置を施した上で、早めに歯科医院を受診しましょう。
なお歯茎の腫れや炎症があるということは、口腔内に何らかの異常が起こっています。抗生物質などで一時的に症状を緩和させることは可能ですが、根本的な治療を行なうことが第一であることを念頭に置いておきましょう。
そのためには腫れた原因を考えつつ、歯科医院で教わった適切なブラッシング方法を実践しながら口腔ケアをすることが大切です。
通院が面倒だからといってそれを怠ると、再発を繰り返して悪化の一途を辿るでしょう。
結局治療が必要になりますし、悪化している場合は治りも悪いので治療期間が長引きます。通院回数がかさむと費用も高額になり、デメリットしかありません。

特に、我慢できないほどの痛みが生じている場合は要注意です。初期段階では気付けなかった(あるいは気付いていないフリをしていた)、何らかの病気が進行しているかもしれません。
今回紹介した内容に心当たりがある方は、早めにかかりつけ医を受診しましょう。我慢しないことが大切です。

ケン歯科クリニック